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【潜入!工場見学】知られざる「加工用たまご」の世界と、安全・安心・おいしさを支える秘密

オムレツやたまご焼き、ケーキやお惣菜まで ―― 私たちの食卓に欠かせない「たまご」。
その一部、実は割られた状態の「液卵(えきらん)」や、ゆでたまご・厚焼きたまごといった「タマゴ加工品」として広く活用されていることをご存知でしょうか。

日本で生産されるたまごの約20%は、こうした加工のかたちで流通し、外食産業やスーパーのお惣菜など、見えないところで私たちの食生活を支えています。ひとくちに加工用たまごといっても、その種類や製法はさまざま。今回は、その最前線を知るために「液卵」を製造するキユーピータマゴ・飯能工場へ潜入!工場長の牧さん、次長の秦さんへの取材を実施。さらに本社へと取材を重ね、営業開発部 商品開発課 課長の江崎さんにお話を伺いました。

キユーピータマゴ 飯能工場 外観

安全を守る徹底した製造工程から、たまごを無駄なく使い切るサステナブルな舞台裏まで、知られざる加工用たまごの可能性を紐解きます。


写真左から:
キユーピータマゴ株式会社 生産本部 飯能工場 工場長 牧隆之さん
キユーピータマゴ株式会社 生産本部 飯能工場 次長 秦健二さん

キユーピータマゴ株式会社 営業本部 営業開発部 商品開発課 課長
江崎智弘さん

〈目次〉

1-1.レストランやお惣菜の現場で大活躍!「加工用たまご」の基礎知識
1-2. ニーズに合わせて「おいしさ」と「機能」をコントロールする高度な技術
1-3. 店頭には並びにくいたまごも、無駄なくおいしく変身

2-1. 【工場見学】徹底した衛生管理!安心・安全な「殺菌液卵」ができるまで
2-2. 液卵ができるまでのステップ

3-1. 卵黄と卵白、それぞれの個性を活かした食品たち
3-2. 殻から膜まで!たまごを丸ごと使い切るサステナブルな取り組み
3-3. 加工用たまごの未来と、私たちの暮らし

4. 【おまけ】中の人が一番好きなたまご料理は?

1-1. レストランやお惣菜の現場で大活躍!「加工用たまご」の基礎知識

私たちが普段、外食や中食(お惣菜・お弁当など)で口にしているたまご料理には、殻付きの生たまごではなく、工場で効率的かつ安全に処理された「加工用たまご」も使われています。

これらは大きく分けて、殻を割って中身を溶いた後パッキングした「液卵」や、それを凍らせた「凍結卵」、パウダー状にした「乾燥卵」などの タマゴ素材品 と、たまごサラダや厚焼きたまごなど調理まで施した タマゴ加工品 の2つに分類されます。

なぜ厨房のプロたちは、殻付きたまごではなく「加工用たまご」を選ぶのでしょうか?キユーピータマゴ・飯能工場 工場長の牧さんがその理由を説明してくれました。

牧さん :「一番の理由は、業務用の現場における『圧倒的な効率化』と『人手不足への対応』にあります」

飲食店や食品メーカーの工場で、毎日何万個ものたまごを人の手で割り、混ぜる作業は手間の掛かるものです 。あらかじめ液状になっている液卵を使用すれば、その手間をまるごと省くことができ、深刻な人手不足に悩む食の現場の強い味方になります

さらに、業務用の現場を悩ませる「かさばる殻ゴミ」の処理・管理コストをカットできるほか、現場でたまごを割る際におきる殻の混入や、使い切れずに廃棄するリスク(食品ロス)を排除できるメリットもあります。

牧さん :「そして何より大きいのが『サルモネラ菌による食中毒の防止』です。生たまごには、ごく稀に内部に菌が存在するケースがありますが、工場で適切な加熱殺菌を施して出荷される液卵なら、 外食や給食の現場へ『絶対的な安心』を届けることができるんです

1-2.ニーズに合わせて「おいしさ」と「機能」をコントロールする高度な技術

加工用たまごの強みは、単にたまごを効率よく届けるだけにとどまりません。プロの料理人やメーカーのこだわりに応えるため、たまごが持つ「五大機能(起泡性、熱で固まる熱凝固性、油と水を混ぜ合わせる乳化性、色、栄養価)」を、高度な技術でコントロールしています。

牧さん :「ケーキのスポンジをきめ細かく膨らませるための卵白や、加熱してもダマにならずスープの中で美しい『ひだ』になる全卵など、お客様の用途に合わせて絶妙に機能性を付加しています。その他にも加熱しても固まらないスクランブルエッグ風の商品なども私たちの加工技術を活かして製造しています」

本来、加熱すると固まってしまうたまごですが、この物性コントロール技術によって「加熱しても半熟感」を安全に楽しめる仕組みになっているのだそうです。

1-3.店頭には並びにくいたまごも、無駄なくおいしく変身

こうした高度な加工技術は、養鶏農家を支えるサステナブルな仕組み(需給の調整弁)としても機能しています。

鶏が産むたまごのサイズは、若い時期の「SS」から 体が大きくなるにつれて「LL」まで日々変化します 。しかし、一般的なスーパーの店頭に並ぶのはサイズが揃ったMやLサイズが主流です

牧さん :「中身を割って使う私たちにとっては、たまごのサイズは関係ありません。市場に出回りにくい規格外のたまごであっても、中身の品質や安全性は全く同じ。これらを工場が積極的に受け入れて活用することで、貴重な食料資源を無駄なく使い切り、食品ロスを未然に防いでいるんです」

2-1.【工場見学】徹底した衛生管理!安心・安全な「殺菌液卵」ができるまで

では、運ばれてきたたまごは工場でどのように製品化されているのでしょうか。ここからは工場長の牧さんと次長の秦さんにご案内いただき、厳格なオートメーション工程を見ていきましょう

工場内は衛生度に応じて厳しくゾーン分けされており、最終的にパッケージングを行う「充填室(じゅうてんしつ)」は最も衛生度が高いエリア 。室内の気圧を高めて外部からの空気やホコリ・菌の侵入を完全に防ぐ「陽圧管理システム」が導入されています。

牧さん :「作業スタッフは、入念な手洗い、ローラーがけ、二重のエアシャワーを経て初めて入室が許されます 。さらに、夜間は専門の洗浄スタッフが一晩かけてすべての機械を解体・洗浄・殺菌するという徹底ぶりなんですよ」

2-2.液卵ができるまでの4ステップ

①受入・サンプリング検査

工場に到着したたまごはロットごとに抜き取り検査を行い、鮮度や品質を厳しくチェック 。合格したたまごのみが、産地や納品日のデータを記録したバーコードと共に、8度以下の貯卵庫で鮮度を維持しながら保管されます

②洗卵・殺菌

殻を割る前に、たまごの表面を完全に洗浄・殺菌します。温められた次亜塩素酸ナトリウム溶液などの洗卵槽を通し、ブラシ洗浄と水すすぎを行います。割卵直前には、高精度カメラによる自動検査装置で血玉などの不良卵を瞬時に検知・除去し、さらに人の目による目視確認を重ねる「2重のチェック体制」をとっています。

③割卵(かつらん)・分離

きれいになったたまごは「割卵機」へと送られます 。機械が一瞬で殻を割るスピードは、最新の高速機ではなんと 1分間に約2,000個

秦さん :「全卵として混ぜ合わせるだけでなく、この段階で『卵黄』と『卵白』に美しくセパレートする構造になっています」

④殺菌・充填・出荷

取り出された液卵は、適切な加熱殺菌を施された後、外気に触れることなくスピーディーにピロー(小袋)や専用容器へと自動充填されます。 10kgや16kgといった大きな荷姿のチルド液卵は、主に大手の製菓・製パンメーカーへ出荷されていきます。

3-1.卵黄と卵白、それぞれの個性を活かした食品たち

こうして美しくセパレートされた卵黄と卵白は、同じたまごでありながら全く異なる個性を持ち、それぞれの特徴を活かして多様な食品へと姿を変えていきます 。今度は本社にて、営業本部 営業開発部 商品開発課 課長の江崎さんにその先の行方を伺いました

江崎さん 「卵黄と卵白って、本当に面白いほどキャラクターが違うんですよ。 まず卵黄ですが、みなさんもよくご存知の通り、豊かなコクと『油と水をなめらかに混ぜ合わせる乳化性』という素晴らしい性質を持っています 。この強みを最大限に活かした代表格がマヨネーズやドレッシングなどの調味料です 。また、あの濃厚な味わいを出せることから、プリンなどのスイーツにも欠かせない存在になっています」

一方で卵白の方はというと、こちらは『優れた泡立ち(起泡性)』と『加熱したときのぷりっとした弾力(熱凝固性)』が最大の武器になります 。キメの細かいメレンゲやスポンジケーキといった洋菓子はもちろん、あの独特の食感を出すためにカマボコなどの水産練り製品や、ハムなどの畜肉加工品にも裏方としてものすごく重宝されているのだそう。

特に日本では、乾燥して粉末状にした『乾燥卵白』の需要が非常に高く、お惣菜や麺類などにも広く使われています。コンビニの冷やし麺などが、時間が経っても柔らかくならずに独特のツルツル食感を保っていられるのも、実はこの乾燥卵白が一役買っているからなのです。

江崎さん 「夏場のたまごは気温が高いところに置かれることで、濃厚卵白が少なくなる傾向があり、卵白の泡立ちのコシが弱くなってしまうことがありますが、そこに乾燥卵白を少し加えて補強することで、1年中安定した品質のスイーツを作ることができるんです」

こうした需要は、その時々の食の流行によっても変化するのだとか

江崎さん :「面白いもので、かつて『なめらかプリン』が大ブームとなった時期には卵黄の需要が急増し、その裏で卵白が多く発生するといった、加工用たまごならではの需要バランスの波があります。アメリカではプロテイン摂取への関心の高さから『卵白』の需要が強く、一方でヨーロッパではソース料理への活用から『卵黄』が多く使われる傾向にあるなど、国によって違いがあるのも、面白いところです」

3-2.殻から膜まで!たまごを丸ごと使い切るサステナブルな取り組み

加工用たまごの製造現場におけるもう一つの大きな特徴は、製造過程で発生する副産物を100%有効活用する「食品リサイクル」の先進的なモデルである点です。

江崎さん :「たまごの重量の約10%を占める殻は、工場で乾燥させて細かく砕くことで、様々な用途に生まれ変わります 。炭酸カルシウムが主成分ですが、最も流通している石灰石を砕いて作られる炭酸カルシウムよりも体内に吸収されやすい特長があります。 そのため、スナック菓子や栄養補助食品などの原料として活用され、再び私たちの栄養として還元されています」

食品の枠を超え、学校で使う「チョーク」や「タイル」さらには「ゴミ袋」、農地を豊かにする「土壌改良剤」としても広く利用されているそうです。

江崎さん :「さらに、殻の内側にある、あの薄い『卵殻膜(らんかくまく)』もきれいに分離して回収しています 。コラーゲンやアミノ酸が豊富に含まれているため、最先端の美容液や化粧品、健康食品といった高付加価値な製品へと活用されています 。昔の人が傷口に卵殻膜を貼って傷を癒やしていたという知恵が、現代の最先端科学の場で活かされているのはロマンがありますよね」

キユーピータマゴ飯能工場では、製造時に発生する廃液卵を外部のバイオガス製造会社に有価物としてお届けし、発生したバイオガスを燃料として発電し売電する、循環型エネルギーの取り組みも始まっています。

3-3.加工用たまごの未来と、私たちの暮らし

牛乳パックのような容器に入った液卵や、乾燥卵 。普段の買い物ではなかなか直接目にすることのない存在ですが、知れば知るほど、私たちの暮らしに密着した存在であることが分かります

江崎さん :「アメリカでは牛乳パックのような容器に入った液卵がスーパーに並ぶのが日常ですが、日本でも近年、コンロを全く使わない『コンロキャンセル界隈』と呼ばれる若者層が増えており、『電子レンジで手軽にたまご料理を作りたい』というニーズが高まっています

すでに業務用としては、『茶碗蒸しの素』をはじめ、『プリンベース』『キッシュベース』『フレンチトーストベース』といった便利な商品を多数展開しています。いつの日か、日本のコンビニやスーパーにも小さな液卵パックが並び、誰もが手軽にプロの味を作れる時代が来るかもしれません。もっと加工用たまごという存在が世の中の役に立てるよう、一般への認知も広げていきたいですね」

パンやスイーツ、お惣菜、学校給食、外食チェーン―― 。普段はあまり意識しませんが、加工用たまごは私たちの食生活のあらゆる場面を支えています 。さらに、人手不足への対応や食品ロス削減、資源の有効活用など、現代の社会課題の解決とも深く関わっている、いわば「食のインフラ」そのものです

鶏はほぼ毎日たまごを産み続けます。それに合わせるように、加工用たまごの工場もお正月などのごく一部の例外を除いて毎日稼働し、日本全国への供給責任を果たしています。

普段、私たちがカフェのパンやレストランの料理、 コンビニのお弁当を食べて「美味しい」と感じるその一瞬。私たちの目には見えない殻の向こう側で、たまごの安心安全と、資源を余すところなく使い切る持続可能なテクノロジーが、今日も静かに私たちの食卓を支え続けているのです

4.【おまけ】中の人が一番好きなたまご料理は?

インタビューの最後、今回、お話を伺ったみなさんに「一番お好きなたまご料理は何ですか?」と尋ねてみました

牧さん: 「私はシンプルに目玉焼きですね。黄身を半熟にして、マヨネーズをかけて食べるのが一番好きです」

秦さん: 「私はたまご焼きも、ゆでたまごも... たまご料理ならなんでも好きです。ゆでたまごの製造に携わっていた時はあまり食べたくなかったのですが(笑)、今は毎朝食べています。塩をかけて食べるのがいいですね」

江崎さん:   「うーん、やっぱり『カツ丼』ですかね! 白身と黄身が綺麗に分かれていて、ちょっと半熟なのが最高です。お惣菜コーナーでも、親子丼を抑えてカツ丼は圧倒的に強いんですよ(笑)」

みなさん、プロとしての鋭い眼差しと、たまご愛に溢れた温かい笑顔が印象的でした 。スーパーのお惣菜コーナーで見かけるお馴染みのカツ丼の美しい半熟のグラデーションの裏側にも、もしかしたら今回伺ったような、熱い技術と想いがぎゅっと詰まっているのかもしれません

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